イベント報告

NAMM Business Tour 2003

NAMMビジネスツアー

 第6回 MIDI規格委員会主催、NAMM2003ビジネスツアーは、15名の参加協力を得て、1月15日から1月21日まで、米国NAMM Winter Marketの視察、MMA(MIDI Manufacturers Association)との会議開催及びMMA総会への参加を目的に催行されました。 2003 NAMM International Music Marketは1月16日から4日間に渡り開催され、出展社数 1,311社(前年比+9%)、展示面積50,400 u、入場者数67,601名(前年比+4%)を記録しました。 また今年のAMEI/MMA Joint meetingはショー3日目(土曜日)のショー終了後マリオットホテルの会議室で行われ、これまでの全ての保留事項について相互の確認が行われました。

NAMM2003ビジネスツアー参加者
(成田国際空港にて)
ツアー最終日
(ディズニーパラダイスピアホテル前にて)


1. ウインターNAMM2003に参加して


(日本シンセサイザー・プログラマー協会 副理事長 氏家 克典 氏にレポートしていただきました。)


 2003年1月15日〜21日にロサンゼルスで開催されたウインターNAMMに参加してきました。
 実は今年はMIDI生誕20周年記念にあたる年でして、欧米でのMIDIに関するライセンスや取りまとめをしているMMA(MIDI Manufacturers Association)が今回のNAMMでイベントを行う旨の情報があり、日本シンセサイザー・プログラマー協会(以下JSPA)として視察を兼ねての参加でした。JSPAとして計画している今年のイベント(シンセサイザーフェスタ2003)にもMIDI生誕20周年というキーワードはコンセプト的にも合致し、AMEIと共同で運営展開しているMIDI検定にも深く関係する意味もあり、興味深々でMMAのブースを探しました。会場入口では有名キーボーディストの名前が列挙されたMMAのサイン・ボードがあり、(写真1)大いに期待しましたが、実際のMMAブースでは各楽器メーカーからシンセサイザー、電子ピアノ、ソフトウエアを提供してもらい、それに著名キーボーディスト(チック・コリア、リック・ウェイクマン、ジョー・ザビヌル、ヤン・ハマー等)の直筆のサインが書かれた色紙付でオークションをしており、結構いい値段がついていました。(私が見た時にはトライトン・スタジオ88鍵が$4000でした。最後にはきっと$5000ぐらいまで上がったことでしょう〜未確認)で、そのオークションの収益で年内に大規模なイベントを行うとのことですが、未だ詳細は未定だそうです。

写真1
MMAのサインボード
写真2
MIDI生誕20年間の年表

 またブース内ではMIDIに関する生誕20年間のトピックスを分かりやすく年表にしてまとめたパネルが展示されていました。MIDIの歴史的な重要ポイントが正確に把握されており、ぜひ日本語版をAMEIで制作していただき楽器フェアなどで展示して頂きた いと思います。 さて、各社のシンセサイザーやソフトシンセ に目を移すと、大量に新商品が発表されていました。 ソフトウエア分野で特に印象的だったのはOSXに対応したソフトウエアがかなり増加している点です。各種音楽ソフトウエアのOSXへの移行は紆余曲折がありましたが、やっとOSとMIDI、オーディオ・インターフェイス回りの企画(Core Audio、Core midi)が統一され始め、音楽家が安心してOSXに移行できる環境が整ってきたといえるでしょう。ソフトシンセも、本物指向のモジュラー型ビンテージ・シンセサイザーのリバイバル物やサンプラー、ボコーダーなど更にハードウエアを凌駕しそうな商品が多数発表されていて、非常に活気に溢れていました。それに対してハードウエアは、フィジカル・コントローラとしての完成度を追及したものや、新しい音源方式を提案しているメーカーもあり、私のような弾き手やクリエイターの興味をくすぐる斬新なものが多数発表されていて、充分楽しめました。
 また、変わったものでは、 ハードウエア・シンセサイザー形をしていなが ら、中身はソフトシンセをインストールしてある パソコンと各種インター フェイスが合体している ものがあり、一見力技で はありますが、ありそうで無かったその斬新なア イディアには大いに関心しました。

 今後もハードウエアとソフトウエアは色んな意味で融合が加速するであろう事を、身をもって実感することができました。 さてNAMMでの重要なエンターテイメントの一つに、有名アーティストのコンサートがありますが、今年はエルトン・ジョンのトリビュート・ライブがアナハイム近郊のスタジアムで開催されました。最後に登場したエルトン・ジョン本人はもとより、レイ・チャールズ、マイク・マクドナルド、Take 6、ノラ・ジョーンズ、ブライアン・ウィルソン等超有名アーティストの面々が往年のエルトン・ジョンのヒット曲を独自の素晴らしいアレンジで演奏、歌唱し、小学校時代より聴いていたエルトン・ジョン大ファンの私にとって、歓喜、涙モノの大満足なコンサートでありました。



2. 2003 NAMM ビジネスツアー報告

◆ NAMMショーの中でのMMAの活動状況 ◆

 初めに今回のNAMMショーの特記事項としては、MMAが初めて自己のブースを会場のホール"E"の一角に設けて、彼らの企画した"MIDI 規格誕生20年記念"とし て独自の企画を組んで会 長のTom White 自身が 先頭にたってブースに立 ち来場者に応対していた 事を報告します。
 この中ではMIDI誕生20 年を掲げた著名アーティ ストの使用・記念サイン 入り商品のオークション がアメリカらしい企画で あったと思います。
 その他にも、MIDIの歴史に関連した年表等も大きく展示されMMAとしては精一杯MIDIの活用とその歴史の重みをユーザーに知らしめようと努力していたことが良く伺えました。視察者の中でも話題になっていたように感じました。
 MMAの主催したオークションの結果について主催者のTom White氏からの報告では、今回のMMAとしてのブース展示についてはMMAの一般入場者への認知という視点ではオークションを含めて成功したと判断しているようです。このオークションでの売上げ総額は約 $20,000 であり、諸経費分をさし引いてほぼ半額 $10,000 程度の収入であると報告を受けました。
 又、オークションの結果について彼は、NAMM ショー自体がディーラー対象でありやむを得ない結果であるとの見解です。又オークション自体の実施方法等についても今回の方法がベストではなかったとの反省をしていて、改善の余地はあるとの見方です。


◆ MMA/AMEI合同会議について ◆

 NAMM時の恒例となっている会議が、1月18日土曜日のショー終了後マリオットホテルの会議室で行われました。
 参加者はMMA側からはTom/W会長他7名、AMEI 側からは6名が参加されました。
 この会議では、これま での全ての保留事項に ついて相互の確認がさ れました。
 双方での確認事項は 以下の通りです。
 これらの各項目につ いてはAMEI側で個別 に1点づつ片付ける必要がありますので委員会・部会で具体的な対応をすべく準備するように関係者のご協力をお願いします。

- 相互確認事項一覧:
 #092 New MIDI Imp Chart
 #155 AMT Document
 #164 MIDI Watermarking
 #168 1394-MIDI v1.1
 #169 Loop/Branch in SMF/XMF
 #172 Bank Mapping
 #174 Note,Patch & Cointrol Names in XML
 #179 Mobile DLS
 #180 MIDI+Audio in XMF
 #181 DLS 2.2
 #182 XML Name Enhancements & Clarifications
 #183 Unified Audio Plugins
 #184 SP-MIDI Authorring Guidelines



◆ MMA総会 ◆

 NAMM最終日1月19日(日)9時からAnaheim Marriot Hotelにて恒例のMMA総会が開催され、我々AMEIスタッフも傍聴する機会がありました。
 決定事項としては次の通り。

 改選後の新役員:

  • President/CEO:
    Tom White (継続)
  • Board Members:
    Bob Star, Athan Billias, Dan Brown, Denis Labreque
  • Tech S/Board:
    Rick Cohen, Robert Lee, Tom Savell, Bennett Sikes, Rob Rampley, Chris Grigg, David Miller

 決議事項:

  • TSB Item 177 とItem 178についてMMAとして採決決定された。

◆ NAMM Winter Market 2003の雑感 ◆

 今年のショーも例年通りAnaheim Convention Centerで4日間実施されました。
 今年のNAMMで特記すべき点の一つはショー2日目にNAMM協会とヤマハとの共催でElton Johnのコンサートが企画され、演奏会はNAMM会場から車で10分ほどのArrowhead Pond という1万数千人収容という大型のアイスホッケー球場で行われ擂鉢状の大ホールが観客で埋まっていました。
 ショーはEltonの他にもRay Charles等多くのゲスト出演がありバラエティーに富んだ大変楽しいコンサートとなりました。



2. NAMM2003(International Music Market)ツアーレポート

(株式会社フェイス 稲生 裕二 氏にレポートしていただきました)

 2003年1月15日から19日まで、Mobile MIDI部会の一員としてNAMM International Music Market2003ビジネスツアーに参加いたしました。最近、私は携帯端末関連に携わることが多いので、このような楽器全般に渡るイベントに参加でき、非常に興味深い体験となりました。

 ロスの空港に到着した初日、会場であるアナハイムに向かう途中、全米最大の楽器店として有名なハリウッドのギターセンターへ立ち寄るスケジュールが組まれていました。

 当日は、株式会社コルグ創業者の加藤孟氏(写真右)が、ハービー・ハンコック氏、(写真中央)ジョー・ザビヌル氏(写真左)と共にロックウオーク(店の前の床や壁)に音楽に貢献した人々の証としての手形を残すという栄誉の受賞(押版?)式が行われていました。

 音楽家や演奏家だけでなく、楽器を開発した方々にも平等に評価を行うという姿勢に対して感心したのと、「日本ではどうなのか」というところで少し考えさせられたところもありました。
 翌日から会場であるアナハイムコンベンションセンターにてNAMMの視察を行いました。初めてNAMM会場を見た感想としては、月並みですが「とてつもなく広い」という事でした。
 その広い会場に、こんなにもメーカーがあったのかと思うくらいの多数の楽器メーカー、ソフトメーカーが所狭しと並び、日本の不況をしばらく忘れさせてもらえました。
 地下1階から地上4階まで、エレクトリックなものからアコースティックまで、また、ソフトウエアや楽器のパーツ、PA関連やステージ照明装置に至るまで、音楽に関係が少しでもあるメーカーのあらゆる商品が展示されていました。
ただ、ブース規模としては日本のメーカーも目立つ物が多く、この辺りは若干安心するところでした。
ブースがここまで多いと期間中に全てのブースを廻りきれるのだろうかと心配しましたが、案の定、実際に全てのブースを丁寧に見ることは出来ませんでした。
 各メーカーブースは、展示はもちろんのこと、デモ演奏ありノベルティー配布ありと色々趣向を凝らしたイベントが多数あり大変楽しく回ることが出来ました。
 私も、moog社のブースにてムーグ博士のサインイベントの列に並んで、サイン付きバッグをゲットしたりと存分に楽しんでしまいました。
ブースイベントで最も嬉しかったものは、私のお気に入りのコンポーザ/ピアニストであるDavid Benoit氏のデモンストレーションライブを見ることが出来たことでした。
 偶然、メーカーブースの入り口のイベント案内看板を眺めると、今からと書いてあるではないですか!! ミーハーの如く握手や並んで写真を撮ったりと本当に感激してしまいました。
 また、NAMMにあわせて、MMAとのミーティングが19日(AMEI/MMA Meeting)と20日(MMA総会)に開催され、今回の最も重要な目的として参加致しました。
 内容としては、これまでの規格の細かい問題点の整理、議論と新しい規格についての協議になっています。
変わった議題としては、「MMA」という名前自体がMIDIに限定したものであるということで、最近のデジタルオーディオなどを扱うにはふさわしくないという観点から"Audio"も含んだ名称を考えている模様です。
 また、今年がMIDI誕生20周年にあたるので、様々な企画や計画もそれに合わせて考えているようです。
 確かに近年はMIDIよりも、デジタルオーディオの分野での製品が活発になっている事を考えればやむを得ない流れと思いました。

 Mobile MIDI部会に関係する項目である「SP-MIDI」関連の議題では、細かい調整事項はまだいくつかありますが、仕様に関する事は規格がまとまってきた為、現状の必要資料として、コンテンツを作成する為のガイドラインが提案されており、この部分は当部会も関わっていくものと予想しています。 他、「SP-MIDI」ではDLS(Downloadable Sounds)の対応も検討されており、動きは徐々に活発になっていくのではという印象です。
AMEI側からは今回特に提案する議題等が無かった為、日本の最新端末を使っての、GML(General MIDI Lite)演奏のデモンストレーションを行いましたが、MMAメンバーにも好評を得ることが出来幸いでした。

 最後に今回のツアーでお世話になった、AMEIの神川さん、平野さん、Mobile MIDI部会長の飛河さんを始めツアーに同行された皆さんに感謝の意を表します。
 誠に有難うございました。